本に対する愛着が薄れる商売

 本に興味のないせどらーは、そもそも商品に興味のないセールスマンみたいなものだから成功する可能性は限りなくゼロに近いが、本に興味があるせどらーについてもいずれ本に対する愛情が薄れるのが「せどり」という商売だと思う。

 何しろ愛着を持っている本の価値が毎日なくなっていくのをずっと見つめていくのである。本の内容が良かった悪かったという以前に、せどりの対象になった時点で平等にその価値がクズに近づいていく。何万冊の本がクズになっていくのを、毎日毎日見つめて、しかも自らの手で本をクズ価格にしていくわけである。

 本を子どもに喩えるとせどらーが何をしているかよく分かる。苦労して授かった自分の子どもを自分の手でバカに育てて社会的に無価値な存在にするわけだ。

 そうやって数ヶ月せどりをしてアマゾンで売っているうちに、恐らく本に愛着を持っていた人も、本の内容なんかどうでもよくなって、愛着なんかなくなってしまう。優れた内容の本であっても「これは1円のクズだな」という目になってしまう。せどりとは、本に対する愛情が薄れる商売である。

 その点、本物の古書を扱っている人は幸せだ。何しろ、持っている本が古くなればなるほどいぶし銀のような輝きと価値を増すのだから。

 対比させると、つくづくせどらーはバカなビジネスをしていることがわかるが、たぶん当の本人だけは何もわかっていないはずだ。