1円という価格は著者にも失礼

 せどりをしている人が本当に本を愛しているかどうかは疑問で、ただ売れればいいと思っている可能性のほうが高いような気がする。たとえば、1円価格を平気でつけられる人は、どうも著者に対して敬意がないように思える(もっとも私もそれに気がついたのはライターの人と話をしてからなのだが)。

 彼は自分の精魂かけて書いた本がアマゾンで1円で売られているのを知って「まるで自分の価値が1円になったようだ。気分が悪い」と言っていた。確かに、書いた本人から見れば自分の本が1円で売られていたらショックだろうし、「俺の仕事は1円だったのか」と不快な気分にもなるだろう。

 ところが、せどらーはもはやそんな作者の心情を踏みにじるかのように、全員が本を「捨て値」にしていく。そこには競争原理が働いているとはいえ、ブックオフで傍若無人に居座って迷惑をかけ、著者の気分を不快にさせ、自らも薄利多売で苦しんで、かつ将来は厳しいわけだから、正直言うと苦しい商売だ。

 さらに関係者を不快にするのは、例によって下らない内容を情報商材にして売りつけている連中で、こちらは数万円もの金をふんだくっていくわけだから、詐欺師かその類に思われても仕方がない。

 売れれば人を騙してもいいみたいな殺伐とした状況が「せどり」のまわりに漂っていて、それがよけいに部外者から見ると、気味の悪い世界に見える。気がついていないのは、もちろん自己弁護をしなければならない本人だけである。